広島と長崎の上空に人類史上初めて原子爆弾が投下されてから78年。無差別に罪もない多くの一般市民の命と生活を奪い、生涯にわたって心身を痛め続ける核兵器の危険性や脅威は、世界中で認識されているにも関わらず、現在もおよそ12,700発あまりの核兵器が地球上に存在します。しかもその大半をロシアとアメリカが保有し、フランス、イギリスも核保有国です。
　2023年5月19日、それら核保有国を含む先進7カ国（Ｇ７）首脳が、広島の地に集合しました。21日にはウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、1年半にわたってウクライナに侵攻を続けるロシアを非難し、結束してロシアへの制裁とウクライナ支援を継続することを確認しました。

　広島の地にG7首脳が集い「核のない世界をめざす」というメッセージが発せられることを多くの人が期待しましたが、「核軍縮に関するＧ７首脳広島ビジョン」として発表された内容は、核兵器不拡散条約（ＮＰＴ）を核兵器不拡散体制の礎石と位置づけ、その堅持を明記するとともに、核兵器保有国が互いに核戦力を開示して透明性を確保し、核兵器数の削減努力を継続していくことを柱としました。
　被爆地・広島で開催された歴史的なサミットにおいて、グローバルサウスの国々に加え、ウクライナ大統領も出席した中で、「核兵器のない世界」の実現に向けた具体的な道筋が示されず、核兵器による抑止力を事実上肯定したことには大きな失望が広がりました。