2019/08/27 議員団会議(政策制度要求協議)の様子

「政策・制度要求と提言」の提出にあたり

県中央地域連合は、「政策・制度要求と提言」を重要な運動での一つと位置づけて取り組んでまいりました。私たちは労働者としてのみならず、この地に住む生活者としても地域との密接な関わりを持っています。その立場からの「要求と提言」を受けとめていただきたく思います。

新型コロナウィルス感染症の拡大は、私たちの生活はもとより、日本の社会、経済に大きな影響を与えるとともに、社会における脆弱性をうきぼりにし、くらしの様相を一変させました。各自治体におかれましても、引き続き厳しい状況の折かとは存じますが、この「要求と提言」の意図するところをお汲み取りいただき、より良い市政運営に反映いただくことをお願いいたします。

2021年  月  日
日本労働組合総連合会神奈川県連合会
県中央地域連合
議長 綿引芳弘

綾瀬市古塩市長
海老名市内野市長
座間市佐藤市長
大和市大木市長

2022年度に向けた政策・制度要求と提言

目次

1.経済・産業政策

  1. 産業の活性化ならびに雇用の確保・拡大のためにも、企業の誘致および既存企業の操業支援策を進めること。
  2. 地域経済の発展に向け、国・県が保有する融資・貸付制度が有効活用されるよう周知の強化をはかること。
  3. ≪大和市・座間市≫
    中小企業で働く従業員の福利厚生拡充に向け、中小企業勤労者福祉サービスセンターへの支援を強化すること。また更なる充実をめざし、近隣市との連携を図る中、広域化を検討すること。

    ≪海老名市・綾瀬市≫
    中小企業で働く従業員の福利厚生拡充に向け、近隣市との広域的運営を含め、中小企業勤労者福祉サービスセンターの設置をすすめること。

    背景 勤労者サービスセンターは、被雇用者の大多数である中小零細事業所に勤める従業員の福利厚生を、一歩でも大企業従業員に近づけるためのものである。働き手の不足が深刻化する昨今、福利厚生の充実は地域労働現場の魅力を高め、地場産業の活性化のみならず、定住促進にも資するものと考える。
  4. 「下請法」「下請振興基準」の周知徹底をはかり、公正な取引の推進を啓発すること。
  5. 市民に身近な商店街の活性化をはかること。

2.雇用・労働政策

  1. 地域の良質な雇用確保に向け、ハローワークやその他関係機関と連携し、雇用促進に向けた事業等を積極的に展開すること。
  2. 希望者全員の65歳までの雇用確保がなされるよう、継続雇用制度の周知徹底をはかること。
  3. 働く意欲を持つ高齢者の就業支援策を講じること。
  4. 外国人労働者(技能実習生・留学生を含む)の賃金・労働条件の適切性を担保するため、経営者団体等と連携した取り組みを進めること。
  5. 貴市が雇用する非常勤職員の待遇改善を図ること。とりわけ時給単価を改善すること。
    背景 10月1日より神奈川県の最低賃金は1040円となった。最低賃金法の根拠となる労働基準法第1条2には「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」と明記されている。公務には、法の理念を遂行し広く社会に率先垂範する役割が求められている。前記2項にあるように、民間企業に事業所内最低賃金の引き上げを呼びかける立場の行政において、非常勤職員の賃金が、最低賃金あるいはそれと同水準という事態がないように、お願いしたい。
  6. 2018年4月から身体障害者・知的障害者に加えて精神障害者の雇用も義務化されたことを視野に入れ、障がい者雇用を促進する制度の積極的活用を推進すること。また障がい者雇用に関する企業からの相談・支援体制を充実させること。
  7. ≪大和市・綾瀬市・座間市≫
    教職員の担うべき業務のあり方と働き方改革の観点から給食費の公会計化をすすめること。

3.福祉・社会保障政策

  1. 誰もが住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、医療・介護・住まい・生活支援・福祉等が一体的に提供される地域包括ケアシステムを確立すること。
  2. 特別養護老人ホームへの入居待機者の解消に努めること。
  3. 一人暮らしの高齢者や認知症の人が増加している中、地域包括支援センターと共同し、地域住民とともに高齢者見守り体制を構築すること。
  4. 障害者優先調達推進法に基づく調達方針については、明確かつ障がい者福祉の大幅な向上につながる数値目標を設定し、その実現に努めること。
  5. 生活保護費を真に必要とする市民が、不安を感じることなく受給できる体制を堅持すること。
  6. 保育園・学童保育の待機児童の解消について、県内では2020年10月の保育所等利用待機児童数は2,163人となり、前年同月と比較して1,027人減少したが、利用申込率は年々増加している。また、放課後児童クラブの利用者と待機児童数も増加傾向にあるとしている。貴自治体においても、保育園待機児童及び学童保育の待機児童について、「子ども・子育て支援制度」の着実な実施に向けて取り組みを推進すること。
  7. 幼児教育の無償化が施行される中、ニーズの変化を事前にとらえ施策展開に支障が生じないよう手立てを講じること。
  8. ひとり親世帯の生活は、非正規雇用で働く場合が多く、特にコロナ禍では、今まで以上に収入が不安定となり、苦しい生活を余儀なくされている。安定した生活と子育てを支えるために、生活支援策の拡充、保育所への優先入所、職業訓練等の自立支援策の強化に加えて、相談対応、情報提供などの支援も検討・実施すること。
  9. 児童虐待から子どもの人権を守る観点からも、妊婦検診の周知、乳児検診などを通じて母親を孤立させないよう、妊娠・出産・子育てへと切れ目のないサポートを図ること。
  10. 市民が自発的に行う「子ども食堂」の実態把握を進め、開設・運営に関する公的支援を行うこと。
  11. 潜在保育士(資格を持ちながら保育現場で働いていない人)の復職・就職支援に取り組むこと。あわせて保育士の賃金等、処遇改善を図ること。また職場環境の改善に向けた支援策を推進すること。
    背景 子ども・子育て支援を展開していく上で、保育士が不足する事態に陥っては、その目的達成は困難となる。賃金を含む待遇改善を促すとともに、研修や人材バンク等、復職・就職に向けた支援に、取り組まれたい。
  12. 新たな感染症への対応などを見据えた、地域医療構想の見直しを検討すること。特に、指定医療機関・保健所との連携や人員配置の見直しを含めた機能強化をはかること。また、平常時から市民生活への影響を最小限にとどめるため、予防方法や感染防止策などの情報発信について早急に体制整備をはかること。

  13. 新型コロナウィルス感染症が長引くことで顕在化してきた「貧困の問題」への対応の一つとして、未利用の食料品を地域資源として有効活用するため、地域で運営されている「フードバンク」「フードドライブ」、「こども食堂」さらには「生理の貧困」など、地域におけるネットワークの拡大や活動の普及に向けた支援の充実をはかること。

4.社会インフラ政策

  1. 自治体提携融資制度等の利用喚起に向けた制度改善(利用限度額・返済期間の拡大等)を検討すること。また現行制度の維持ならびに運用(預託金・利用対象の条件等)の拡大を図ること。
  2. 勤労者住宅資金利子補助金交付制度については維持・拡充を基本とし、制度休止(廃止)の自治体においては、その復元、あるいはそれに代わる勤労者の市内定住に寄与する制度を検討すること。
  3. 勤労者はもとより、広く市民の生活をサポートしてきている「神奈川生活相談ネット」パンフレットの諸施設への据え置きを継続すること。
  4. 消費生活センター機能の充実強化に向けて、専門相談員の確保・育成および処遇改善に努めること。
  5. 多重債務者対策を強化すること。
    背景 近年、自己破産者が増加傾向にあり、その理由の一つとして銀行が総額規制の対象外であるカードローンの存在が言われている。また、最近ではスマートフォンを利用した安易な借入や、2022年4月1日からの民法改正により、成年年齢が18歳に引き下げられることなど、多重債務の低年齢化など社会問題に発展することが懸念される。神奈川県は相談受付や解決方法の提案など、体制強化に努められたい。
  6. 国内の人口減少と働き手不足から、今後一層の増加が見込まれる外国人労働者が、地域社会の中で適切な市民生活が送れるよう、労働・医療・福祉・教育等の相談および共生の観点に立った支援策を講じること。

  7. 市内における「空き家」の調査は継続し行い適切な措置を講じること。とりわけ「特定空き家」については早急な対策を行うこと。

  8. 県央エリアにおいては、大規模商業施設や高速道路インターなどの開設なども計画され、更なる交通渋滞などが懸念されることから、適切な交通政策を展開し、住民が利用しやすい交通手段の確保・交通渋滞の解消および円滑な物流の促進を進めること。併せて、市内道路の横断歩道や停止線など道路表示が消えている場所が散見されるので、安全確保の観点から貴自治体の委員会等と連携して関係機関へ修繕を促すよう働きかけること。

  9. 大規模・多様化する自然災害に対応するため、災害種別により設置場所が異なる避難所について、市民へ必要な非難情報が確実・正確に伝達されるように各種情報手段を利用し、自治体と地域コミュニティが連携し構築していくこと。また、福祉避難所の設置を進めるとともに、どこの指定避難所においても障がいの有無、要配慮者・要支援者・高齢者に対応した地域の中で包括的に受け入れることができる避難所設営をめざすこと。また、避難行動要支援者の名簿作成、個別避難計画の対策を強化すること。

  10. 未だに高齢者による重大交通事故が多発している中で、免許証を自主返納した高齢者などの生活において活動範囲の妨げとならないよう、代替えとなる移動手段等の支援を進めるよう国への働きかけも含め対策を図ること。

5.環境・エネルギー政策

  1. 中小企業の事業所や個人住宅などの建造物において、高気密化やゼロエミッションハウスの導入、または省エネ、新エネ機器、省エネリフォーム等への継続的な支援を図ること。

  2. 公共車両を含め環境対応車の普及を促進するとともに、次世代自動車に対するインフラ整備を推進すること。

  3. 「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」によって導入された「地方公共団体実行計画」等に基づき、温室効果ガス排出削減に向けた施策の実施と更なる推進をはかること。

  4. 食品ロス削減の取り組みを推進するため、自治体・小売店や外食チェーン等の関係者が連携した啓発活動を行うこと。またフードバンク事業団体と連携し、生産・流通・消費など一連の過程で発生する未利用品を有効活用するため、「フードバンク」「フードドライブ」について、ネットワークの拡大・活動普及に向けた理解活動への支援をはかること。

  5. 国における2050年カーボンニュートラルの宣言によって、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部改正がすすめられている。そこで地方自治体における環境に関する計画の見直しにあたっては、行政と民間企業等との連携をすすめ、環境技術開発への支援を拡充すること。

6.教育・人権・平和政策

  1. 市立小中学校に勤務する教職員の勤務実態を把握し、多忙状況の解消に努めること。

  2. 市立小中学校に勤務する臨時的任用・非常勤職員の縮減を関係機関に働きかけるとともに、30人以下の学級の実現に努めること。

  3. 常に定数を充たす教職員配置がなされるよう、県とも連携し最重要課題としてとりくむこと。

    背景 全国的に教員不足が問題となっている。育休者や療休者があった場合、代替の教員が配置されなければ子どもの学習権に関わる問題であり、そのような事態が生じないよう対応いただきたい。

  4. 今後は外国籍労働者の増加が見込まれている中で、外国籍および日本語以外を母語とする子どもたちに母語や母国文化の学習のための機会を保障すること。

  5. いわゆる「ブラック企業」「ブラックアルバイト」が社会問題化する中、従前のキャリア教育の枠内にとどまることなく、子どもたちが労働に関するルールを正しく理解し身につける「労働教育」を、各学校現場と連携して推進すること。

  6. ≪大和市≫
    高等学校等進学者に対する奨学金制度を充実させること。とりわけ①支給定員の拡大 ②成績要件の廃止等の見直しを行うこと。

    ≪海老名市・綾瀬市≫また対象者すべてに制度への周知を行うこと。
    高等学校等進学者に対する奨学金制度を充実させること。とりわけ支給定員の拡大を検討すること。

    ≪座間市≫
    高等学校等進学者に対する奨学金制度を給付型に変更すること。

    背景 近年、大学生対象の奨学金が社会問題化し、制度改善が進められつつある。一方、その手前の高校進学の保障も見過ごせない課題である。その観点から、すでに貴市が高校進学を支援する奨学金を制度化していることに敬意を表したい。

    ただ「格差」が言われ子どもの貧困率が高止まりする中、その制度改善が必要と考える。貴市で育ち市立中学校で学んだ生徒が、家計状況により進学困難に陥らないよう、より力強い支援をお願いしたい。

  7. 「ヘイトスピーチ」など排外主義的な風潮が醸成されないよう、多文化・多他民族共生の教育および啓発に努めること。

  8. 障害者差別解消法をふまえ「対応要綱」を整備するとともに、全ての市民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、人格と個性を尊重しあいながら共に生きる社会をめざす施策を推進すること。

  9. 審議会・委員会などへの女性委員登用にあたっては、目標50%の早期実現に努めること。

  10. 厚木基地・キャンプ座間の縮小・返還に向けた取り組みを強化すること。とりわけ艦載機移駐後の厚木基地について、基地機能強化・固定化につながる運用がなされないよう強く働きかけるとともに、運用内容の開示を求め、不要となった部分があれば早期の返還を要求すること。

  11. 艦載機移駐後の厚木基地周辺に騒音・落下物の被害がもたらされないよう、国および米国に働きかけること。

    背景 艦載機の移駐が完了し騒音が減ったとされているが、米軍ヘリコプターの往来や稀に戦闘機の飛来、また、頻繁に往来する自衛隊輸送機がある。生活実感として、いわゆる「爆音」と呼ばれる100db以上の回数は減ったものの、「電話の声が聞こえない」「テレビの音が聞きづらい」レベルの騒音には頻繁に悩まされている。またヘリコプターの音は長時間にわたる。今後は「短時間の大騒音」と「長時間の騒音」を積み上げて数値化し、「総量」の抑制に向けた取り組みが必要と考える。

  12. 米海軍厚木基地艦載機の岩国移駐が完了したとはいえ、未だに艦載機の離発着は見られ基地内では艦載機の整備、離発着等の業務が減少していることを鑑み、基地従業員の雇用への影響が今後も続くと思われることから、調査し必要な措置を検討すること。

  13. 日米地位協定の抜本的な見直しを求めること。

  14. 平和都市宣言を実効あるものとするため、市民と協働する事業を積極的に展開すること。あわせて平和市長会議での議論を市民にアピールするとともに,「2020ビジョン」に基づく2020年までの核兵器の廃絶と恒久的な世界平和の実現に向けた取り組みについては、2020年以降も継続して推進すること。

7.行財政政策

  1. 自主財源を拡大し,財政基盤の安定を図ること。また,国と自治体の行政機能を明確にし,財源移譲を強力に求めること。

  2. 幼児教育の無償化が地方財政の悪化をもたらすことがないよう、手立てを講じること。

  3. 公契約事業の質と地域経済の健全な発展、事業に従事する労働者の雇用と適正な労働条件の確保を目的に、公契約条例の制定に取り組むこと。また具体的な検討にあたっては、自治体内での検討に留まらず、学識者・業界団体・労働団体等が参加する「公契約検討協議会」(仮称)の設置などによるプロセスを構築すること。

    背景 公契約条例は事業のルール,働くルールを社会的に確立していくために重要であるだけでなく、地域経済の発展につながるものである。ただ、条例化には各方面のお互いの理解が必要であり、まずは関係者・団体による協議会を立ち上げ、公契約上の問題点を洗い出す所から論議することをご検討いただきたい。

  4. 自治体業務・工事発注にあたっては、健保・年金・雇用保険の加入、安全衛生委員会の設置と活動の証明、労災の企業独自見舞金制度適用、中退金加入を入札参加要件とすること。

  5. 公契約で事業を行う際、原材料費の高騰に関しては、補正予算等で適切に対応すること。また公契約で働く労働者が過重労働を招くことがないよう、余裕をもった工期や納品日を適切に設定すること。

8.その他

  1. 「政策・制度要求と提言」についての検証のため、必要に応じて,県中央地域連合との意見交換の場を設けること。