連合神奈川 2019春季生活闘争方針 -そのⅠ-
スローガン 『今こそブレイクスルー!すべての労働者の処遇改善と働き方の見直し!』
はじめに
連合は、11月15日に第16回中央執行委員会を開催し、2019春季生活闘争方針(案)を確認し、11月30日の第79回中央委員会において決定しました。
連合の2019春季生活闘争では、『「総合生活改善闘争」の位置づけのもと、国民生活の維持・向上をはかり、労働組合が社会・経済の構造的な問題解決をはかる「けん引役」を果たす為、①「人的投資の促進」「ディーセント・ワークの実現」「包摂的な社会の構築」「経済の自律的成長」をめざす! ②「底上げ・底支え」「格差是正」と「すべての労働者の立場にたった働き方」の実現を同時に推し進めよう! ③働く者・国民生活の底上げをはかるために果敢に闘おう!(労使で確認してきた生産性三原則「雇用の維持・拡大」「労使の協力と協議」「成果の公正分配」にもとづく労使の様々な取り組みの成果をいまだ届いていない組織内外に広く波及させていく)』としています。
連合神奈川は、こうした連合方針を踏まえ、神奈川全体の「底上げ・底支え」「格差是正」の実現に向けて、2019春季生活闘争の取り組みを、以下の通り提起します。
Ⅰ.連合本部2019春季生活闘争方針(要旨)
1.基本的な考え方
(1)賃金の「上げ幅」のみならず「賃金水準」を追求する闘争の強化
1)「底上げ・底支え」「格差是正」の取り組みの継続と賃金の絶対値の重視
現時点の日本経済の先行きは、通商問題の動向や地政学的リスク、相次いだ自然災害の被害とその復旧・復興コスト等、国内・海外要因の影響を受けつつも、緩やかな成長が見込まれており、企業収益は過去最高を更新している。一方、労働分配率は低下を続け、実質賃金も横ばいとなっており、個人消費については上向き感が見られるものの、回復に向けた勢いは依然として見られない。
働く者のモチベーションを維持・向上させていくためには「人への投資」が不可欠であり、すべての企業労使は日本経済の一端を担うという社会的役割と責任を意識し、すべての働く者の労働条件の改善をはかることが必要である
したがって、賃上げ要求については、社会全体に賃上げを促す観点とそれぞれの産業全体の「底上げ・底支え」「格差是正」に寄与する取り組みを強化する観点を踏まえ、2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする。
2)賃金の実態把握と相場形成に向けて
中小組合の賃上げと格差是正、非正規労働者の均等待遇、男女間賃金格差の是正を実現していくためには、賃金実態の把握と賃金制度の確立が不可欠である。なお、格差是正の取り組みの実効性を担保していくには、より多くの組合が要求根拠を明確にして要求することが肝要であると同時に、「大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動」の継続と定着が必要であることに留意する。
3)取引の適正化の推進
中小企業の賃上げ原資確保には取引の適正化の推進が不可欠であり、「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」が必要であることを、職場労使、経営者団体とともに社会全体に訴えていく。
加えて、働く者は同時に消費者でもある。一人ひとりが倫理的な消費行動を日々実践していくことも持続的な社会に向けた大切な営みであり、消費者教育の推進とともに、働く者の立場から社会に呼びかけていく。
(2)「すべての労働者の立場にたった働き方」実現への取り組み
人手不足が深刻さを増し、働き方改革関連法が成立した中、個別企業労使にとって「人材の確保・定着」と「人材育成」に職場の基盤整備が従来以上に重要課題となる。特に、長時間労働の是正や「同一労働同一賃金」の実現は産業実態に適合した取り組みが必要となるため、産業全体として実現したい姿を共有した上で進めることが重要である。またその際には、企業規模や特定の業種によって取り組みの濃淡や負担感の偏在が生じないようにする必要がある。
2.具体的な要求項目
(1)賃上げ要求
1)月例賃金
① すべての組合は月例賃金にこだわり、2%程度を基準とし、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度とする。要求の組み立ては、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を確保した上で、名目賃金の到達目標の実現と最低到達水準の確保、すなわち「賃金水準の追求」にこだわる内容とする。
② 構成組織はそれぞれの産業ごとの個別銘柄の最低到達水準・到達目標水準を明示し、社会的共有に努める。組合は、組合員の個別賃金実態を把握し、賃金水準や賃金カーブを精査してゆがみや格差の有無などを確認した上で、これを改善する取り組みを行う。
③ 賃金制度が未整備の組合は、構成組織の指導のもと、制度の確立・整備に向けた取り組みを強化する。
④ 月給制の非正規労働者の賃金については、正社員との均等待遇の観点から改善を求める。
2)規模間格差の是正(中小組合の社会横断的水準の確保)
中小組合の賃金の「底上げ・底支え」「格差是正」を進める観点からも、月例賃金の引き上げにこだわり、働きの価値に見合った賃金水準の確保に向けた取り組みを強化する。
3)雇用形態間格差の是正(非正規労働者の社会横断的水準の確保)
時給引き上げの取り組みは、とりわけ、非正規労働者の労働諸条件の「底上げ・底支え」「格差是正」と正規労働者との均等待遇の実現をはかる観点から、次のいずれかに取り組む。
①高卒初任給等との均等待遇を重視し、時給1,050円を確保する。
②すでに時給1,050円超の場合は、正社員との均等待遇の観点から改善を求める。
③「都道府県別リビングウェイジ」を上回る水準めざして取り組む。
④昇給ルールの導入・明確化の取り組みを強化する。昇給ルールが確立されている場合は、その昇給分を確保した上で、「働きの価値に見合った水準」を追求する。
4)男女間賃金格差の是正
男女の勤続年数や管理職比率の差異が男女間の賃金格差の主要因となっていることから、職場における男女間賃金格差の是正に向けて取り組みを進める。
①組合は、賃金データにもとづいて男女別・年齢ごとの賃金分布を把握して「見える化」(賃金プロット手法など)をはかるとともに問題点を点検し、改善へ向けた取り組みを進める。
②生活関連手当(福利厚生、家族手当など)の支給における住民票上の「世帯主」要件は実質的な間接差別にあたるので、廃止を求める。また、女性のみに住民票などの証明書類の提出を求めることは男女雇用機会均等法で禁止とされているため、見直しを行う。
5)企業内最低賃金および初任給
すべての組合は企業内最低賃金を産業の公正基準を担保するにふさわしい水準で要求し、協定化を図る。また、適用労働者の拡大をめざす。18歳高卒初任給の参考目標値…172,500円
6)一時金
月例賃金の引き上げにこだわりつつ、年収確保の観点も含め、水準の向上・確保をはかる。
Ⅱ.連合神奈川としての2019春季生活闘争方針の取り組み
上述した連合方針を踏まえ、連合神奈川として地域と職場が一体となって「安心と安定の社会づくり」をめざした取り組みを進めることとします。
また、今次闘争の納得できる回答引き出しに向けて、引き続き、基本的な役割を明確にし、今次闘争の共闘の強化を図ります。
1.取り組みの基本
(1)すべての組合は月例賃金の引き上げにこだわる取り組みを継続する
「経済の自律的成長」「社会の持続性」を実現するためには、すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」による継続した所得の向上を実現することが不可欠であり、その為には、すべての組合は月例賃金の引き上げにこだわる取り組みを継続するとともに、あらゆる手段を用いて産業全体の底上げに寄与する取り組みを展開します。
そして、組織労働者の成果を非正規・未組織労働者、公務部門へ波及させていくことにします。
1)連合神奈川として「神奈川ミニマム運動」の展開を進め、神奈川独自の水準をしっかりと見極め、中小・地場組合の交渉に役立てます。
2)また、産業部門間の情報交換と取り組みの一体を図り、相乗効果の向上を目指す観点から、これまで強化・充実を図ってきている産業部門別連絡会の機能を発揮した取り組みを展開します。
(2)「すべての労働者の立場にたった働き方」実現への取り組みを推進する。
働き方改革関連法(時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金等)が施行されることを踏まえ、「クラシノソコアゲ応援団!RENGOキャンペーン」第4弾の取り組みや、「Action!36」の取り組みの中で、地域連合・構成組織と連携を図りながら街宣行動等を行い「すべての労働者の立場にたった働き方」実現への取り組みを推進します。
(3)連合神奈川・構成組織の適切な指導のもとで
連合神奈川・構成組織は、雇用ならびに協約締結に至る各単組の具体的指導を行うこととし、単組は産別の指導に基づき、具体的な労使交渉を充実させることにします。また、未加盟組合や未組織への対応については、「連合神奈川の日」のチラシなどを活用し、街頭などで連合神奈川の“なんでも労働相談”を宣伝し、「まちかど労働相談」など積極的な窓口を拡大することによってフォローします。
(4)非正規労働者の労働条件引き上げと格差是正
パート労働者などの労働条件引き上げと、格差是正を中心に取り組み、結果的に組織拡大に繋がる様、取り組みます。
(5)中小支援センターを中心に取り組みを強化
中小企業や未加盟の労働組合の取り組み支援のために、引き続き常設委員会である「中小支援センター」を中心に、地場・中小の賃金改善に取り組みます。
また、連合神奈川の友好組織である「神友連」、連合神奈川傘下の「連合ユニオン神奈川」への取り組みや、未組織・未加盟労働者を含めた全ての働く者の総合生活改善を求めていきます。
(6)「政策・制度要求」の実現を期す
総合生活改善の取り組みを強化する立場から「政策・制度要求」の実現に向け、要求が実現するよう取り組みます。
(7)地域における連帯・相乗効果の向上に努める
県下9地域連合においては、地域毎に学習会・研修会、決起集会等を企画・開催し、連合方針・情勢の理解を深めるとともに、相互の情報交換を密にして連帯・相乗効果の向上に努めます。
なお、活動方針で確認してきた「2020年までに連合神奈川地域フォーラムを各地域連合に水平展開していく」としてきたことから、2019年は助走期間とし、地域毎の学習会・研修会、決起集会等を地域フォーラムに変更し、春闘時期に拘らない開催も可とします。
2.具体的な取り組み
(1)基本的な考え方
すべての労働者を対象とし、「底上げ・底支え」「格差是正」の実現に重点を置いた闘争を展開するために、連合神奈川・構成産別・地域連合は、その機能と力量を最大限発揮すべく、重層的かつ総掛かりでの共闘体制を構築することにします。とりわけ、地方連合会の役割である地域・地場に働くすべての労働者の底上げに注力していくことにします。
(2)部門別連絡会の活動・機能強化
2019春季生活闘争を進めるにあたって、これまで強化・充実を図ってきている産業部門別連絡会を闘争期間中に限り、「共闘連絡会議」として機能をより強化することとし、①金属 ②化学・繊維 ③情報・サービス ④交通・運輸 ⑤資源・エネルギー ⑥公務 ⑦医療福祉の各部門連絡会を通じ、意思統一していきます。
なお、部門別連絡会は、1月~3月に開催し、産業状況、雇用・賃金の実態と情報の共有を図り、今次春季生活闘争の協力・連携を図ることとします。
(3)中小支援センターの取り組み強化
中小労組を組織する構成組織、神友連、連合ユニオン神奈川を中心に、9地域連合も加わり設置した「中小支援センター」の活動の活性化をはかり、地場・中小の賃金改善を始め各種労働条件の改善に向け、構成組織の情報交換、地域共闘に努めるなど、交渉力強化を図ります。特に、厳しい経営環境に置かれる地場・中小組合の闘争支援を、きめ細かく行うこととし、地域の共闘強化を図ります。
(4)神奈川ミニマム運動の取り組み
神奈川における地域・地場・中小組合の賃金実態を基に、神奈川ミニマム運動の確立に向け取り組みます。
なお、2019年地域ミニマム運動の結果について、その趣旨が活かされるよう、フォローを行います。(2019実績:10産別61組合6,521人、2018実績: 6産別40組合4,400人)
(5)地域フォーラムの開催に向けて(2018年12月5日開催、参加者:80名)
神奈川県・神奈川県経営者協会・連合神奈川の共催による「政労使一体の働き方会改革フォーラム」を開催します。地域の労働条件の底上げと賃金の波及力を高めるため、定期的な開催に向けて、引き続き、関係組織と調整していくことにします。
3.政策・制度要求の取り組み
政策制度要求と春闘を「運動の両輪」として、生活改善・格差是正の運動を進めます。
「2019年度に向けた政策・制度要求」については、神奈川県・横浜市・川崎市・相模原市・神奈川労働局からの回答を十分精査するとともに、新たな産別等からの政策要求項目を踏まえると共に、将来を見据えた提言の充実に努めるなど、要求と提言の実現に向けて取り組みを強化していきます。
4.組織拡大等の取り組み強化
春季生活闘争の機会と連動して、組織拡大の取り組みを実施します。
(1)時期 2019年2月~7月をキャンペーン期間とします。
(2)内容 ①地域連合・構成産別と連携をとり、「まちかど労働相談」を実施します。
②各地域連合で開催する「連合の日」を活用して、街頭行動にて市民にアピールします。
③組織拡大実践研修会で学んだノウハウを、構成産別・地域連合で実践していくことにします。
5.最低賃金の取り組み
2018年度の総括を踏まえ、生活できる水準への早期引き上げに向けて取り組みの強化を図ります。
(1)取り組みの基本
1)最低賃金は、賃金闘争の基礎となることから、労働組合のまさに賃金闘争と位置づけ、取り組みを強化します。
2)最低賃金は、連合神奈川の基本的任務と捉え取り組むこととし、その前進に向け最大限の力が発揮できる環境を作り上げていくことにします。
なお、取り組みにあたっては、各産別・単組と一体となった取り組みを進めます。
3)連合方針に基づき、産別は加盟組合全従業員対象の最低賃金協定締結の有無を把握し、すべての組合が必ず要求するよう指導するとともに、パート・有期契約労働者を含む全従業員対象の企業内最低賃金協定の締結等への取り組みを強化し、産業部門別連絡会などの場で連携を強めていきます。
④ 最賃の理解促進を目的に、広報活動を強化していくことにします。
(2)地域最低賃金の取り組み
1)最低賃金対策委員会の開催
最低賃金の前進を図るため、最低賃金担当者会議や学習会等を開催します。
(3)特定賃金の取り組み
1)特定最低賃金の改正について
2018年度の必要性審議の結果を踏まえて、今回「意見の一致を見るには至らなかった」すべての業種(鉄鋼・非鉄・塗料・電気・一般機械・輸送・自動車小売)について、当該産別と十分な意見交換のもと、当該産別労使のイニシアチブの発揮に向けた働きかけを強化するなどの取り組みを進めます。
2)企業内最低賃金について
特定最賃の水準引き上げを視野に入れて、その産業にふさわしい水準で協定するために、企業内最低賃金の締結拡大および見直しを図ることにします。
6.地域連合の取り組み
(1)地域春季生活闘争の取り組み
連合2019春季生活闘争の地域における展開をはかります。具体的には、中小労組を中心に「雇用の確保」「賃金水準の底上げ」「労働条件の維持・向上」をめざし、取り組みを進めます。
(2)連合街頭行動の実施
2019年2~3月のゾーンで、春季生活闘争ならびにクラシノソコアゲキャンペーン第4弾の取り組みを、県下全域にて街頭行動(連合神奈川の日)を実施します。
(3)学習会・集会等の実施
中小労組の取り組み支援のため、「労使交渉」「情報交換」「交渉力の向上」を目的とした、学習会の実施や決起集会等を開催します。なお、なお地域フォーラムにシフトしていくとしていることから、具体実施については、地域連合に一任していくことにします。
7.大衆行動の組織化
(1)2019春季生活闘争総決起集会の開催
交渉の盛り上げに向けて、2019春季生活闘争総決起集会を開催します。
日時:2019年3月7日(水)18時30分~ 場所:関内ホール 規模:1,200名